モータの鳴らし方byHanDen

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2017年07月

回路編 第7回 MOSFETとIGBTの駆動回路

前回にモータを回す回路やVVVFの回路を構成するための半導体スイッチの配置についてのお話をしました。今回はその半導体スイッチを動かすための回路のお話です。

半導体スイッチを駆動する回路はMOSFETIGBTゲート部が絶縁されているのでほぼ同じ構成ですが、トランジスタは少し、異なる回路構成となります。今回は前者のゲート部が絶縁型半導体スイッチであるMOSFETIGBTの駆動回路について説明します。まずは、簡単なラジコンのモータを回すような、低圧回路でのMOSFETの駆動回路について説明したいと思います。

 

ゲート駆動の考え方

前々回の記事で紹介したようにFETは電圧駆動で動作する素子です。内部的にゲートとソースは絶縁されているので理論的には電流は一切流れることはありません。しかし、実際にはソースとゲートが絶縁されていることによりソースとゲートの間にコンデンサができてしまいます。これを等価的な回路図にするとこのようになります。

ゲート部

このように、コンデンサがあることにより、出力をONにした瞬間に大電流が流れるという問題や電荷がわずかに漏れてしまう問題、それ以外にもOFFにしても電荷が残ってしまうことで、ゲート部の電圧が下がるのが遅くなり、FETOFFになるのに時間がかかってしまうなどの問題が発生します。これらを解決するには一定の電流内でできるだけ速くコンデンサを充放電させる必要があります。これを実現するためにはON時は電源から大きな電流を取り出し、OFF時はGNDに大きな電流を吐き出せる回路が必要というわけです。この要求を満たす回路にこのような回路があります。

トーテンポール

このような回路をトーテムポール出力とかプッシュプルと言います。INの端子からHIGHの信号が来ているときは上段のnpnトランジスタがONになって出力はVccとなり、INから信号がない(厳密にいうと電流が吸い込まれているとき)ときは出力はGNDとなるわけです。

プッシュプルの入力でもHIGHLOWの出力が必要となりますが、この回路を介すことでインピーダンスを大幅に下げることができます。そのため、スイッチとプルダウン抵抗程度の回路でも、出力段では比較的大電流が流せる出力信号が得られるというわけです。

 

実際にゲートドライブ回路を製作するときには、この回路が内蔵されているフォトカプラやゲートドライバICを使うのが便利です。このような部品を用いることで回路を小型に仕上げることもできます。

 

ゲートドライブ回路の設計

最初はトーテムポール回路が内蔵されたフォトカプラTLP-250を使ってラジコンのモータドライバのMOSFETの駆動回路を紹介します。


駆動回路

TLP-250でゲート駆動をする回路は、このような感じの回路になります。先ほどのトーテンポール回路がフォトカプラの中に内蔵されたので非常にシンプルな回路構成となります。

フォトカプラの周辺の部品について説明します。VccGNDの間のコンデンサはノイズ除去のためでデータシートに入れるように明記されているものです。

続いて3つの抵抗器の役目と選び方です。

Rled

これはフォトカプラ内部のLEDの電流制限を行う抵抗器です。抵抗器の回で紹介したLEDの抵抗選定の方法で抵抗器を選びます。5V回路の場合は330Ω程度になります。

R

MOSFETのプルダウン抵抗です。フォトカプラが故障等で信号が出なくなった時にMOSFETの入力が不定になることを防いだり静電気からの保護をしています。抵抗値はプルダウン抵抗ですので10kΩ程度で良いでしょう。

RG

FETのゲート抵抗です。先ほど紹介した通りMOSFETゲート部分にはコンデンサがあります。理論上ゲートに電圧を印加した瞬間に無限大の電流が流れてます。大電流が流れるとフォトカプラが壊れる可能性があるほか、MOSFETもリンギングを起こして壊れてしまいます。その電流を制限するのが抵抗器RGの仕事です。

この抵抗器の抵抗値の選定ですが、抵抗値が大きいとMOSFETのスイッチング速度が遅くなりスイッチング損失が大きくなります。逆に低い場合スイッチング速度は速くなりますが、リンギングが発生する場合があります。そのため、設計する回路の条件によりゲート抵抗を選定しますが、計算で求めるものではありません。実験を行い、オシロスコープなどで波形を確認しながら選定を行ってください。なお、ゲート抵抗の範囲としては数Ωから数百Ω程度が一般的です。(筆者はゲートドライバICを使っていますが、ゲート抵抗は10Ωにしています)

 

低耐圧回路の設計

抵抗器の選定ができたので先ほどの駆動回路を4つ並べて、モータを駆動できる回路を構成します。


FullN

NチャンネルのMOSFET4つを用いたHブリッジです。このような構成の回路をフルNHブリッジといいます。このタイプの回路は比較的大きな電力のモータを回す回路でよく使われています。

しかし、この回路ではラジコン等の小型の機械のモータを回すのには不都合な点があります。それは、NチャンネルのMOSFETの特性上モータの電源電圧より高い電圧のゲート駆動電源が必要ということです。ただし、この回路構成が使えるのは、「モータ駆動電源の電圧+ゲート駆動電圧 ゲートソース間耐圧」となっている場合に限られます

小型のラジコンレベルで複数の電源を用意するのは大変です。そのため、場合によりハイサイド(上側)のFETPチャンネルとしたHブリッジが使われる場合もあります。回路図を以下に示します。

PN

この回路は、PN混合のHブリッジです。PチャンネルのFETソース(+端子)より低い電圧をゲートに印加することでONになるため、バッテリの電源だけでMOSFETを駆動することができます。主に小型の小電力のモータを回すための回路で使われます。

しかし、PチャンネルのFETの性能はNチャンネルのFETの性能に比べて低いため大電流を流す回路には不向きという問題があります。また、NチャンネルのMOSFETPチャンネルのMOSFETで特性が違うと変な挙動を起こす可能性があるので特性を合わせた、NチャンネルとPチャンネルでコンプリメンタリのMOSFETを使うのが理想的です。(デッドタイムとかうまく設定すれば特性が違ってもきちんと動くかもしれないですが…)

以上でラジコンのモータを回すためのMOSFETの駆動回路は終わりです。

 

高耐圧回路の設計

次は高耐圧のIGBTを用いた回路設計をしていきたいと思います。先ほどのラジコンの場合の回路とは主に耐圧関連の設計が大幅に変わるということです。まず、ラジコンモータドライバで紹介したPN混合のHブリッジはIGBTでは実装できません。また、フルNチャンネルのHブリッジではゲート駆動電源をすべて同じ電源から取得していましたが、この構成もできません。つまり、ゲート駆動電源の設計も大幅に変わります。

まず、素子の耐圧(ソース・ドレイン間、コレクタエミッタ間)の選び方ですが最低でも入力の電源の電圧より高い耐圧の素子を使わなければなりません。実際には余裕をもって倍程度の耐圧のものを選ぶとよいでしょう。

例として、三相200VVVVFを作る場合を考えます。入力はAC200を整流したDC280V程度なので耐圧600Vの素子を使うと良いでしょう。

 

続いて素子の耐電流の選び方ですが、モータの定格出力を守って制御するなら定格の倍程度の電流に耐えるような部品を選べばよいでしょう。無茶な制御をしたい場合は10倍ぐらい余裕を持ておいた方がいいかもしれません。電圧電流の両方に対して言えることは高電圧がかかる回路なのでかなりのゆとりを持った設計をするのが大切ということです。

 

続いてソースゲート間、エミッタゲート間の耐圧のお話です。実はゲート部の駆動回路自体はこちらの耐圧の都合が非常に大きく関係してきます。耐圧が600V程度の製品でもソースゲート間やエミッタゲート間の耐圧は30V程度の製品が多いです。つまり、最初のラジコンの回路で用いたように電源電圧より高いゲート駆動電源を用意してその電源でゲートを駆動するということができないのです。理由を以下の回路図を使って説明します。


FullN -電圧

回路図を見ると、ローサイド側のスイッチのゲート部に120Vが印加されているのがわかります。これは、明らかに耐圧オーバーというわけです。ハイサイド側は、モータが駆動しているときは、ゲートソース間電圧は20Vぐらいになりますが、電源を入れた瞬間などにゲートソース間の耐圧を上回る可能性はあり得ます。ですのでこの方法でスイッチを駆動するということはできません

そのため、ある程度以上の電圧のHブリッジではそれぞれの半導体スイッチのソースとゲート間に別々の絶縁された電源を用意して半導体スイッチを駆動するというわけです。回路図で表すと以下のようになります。IGBT 駆動

この回路図中のVCCGNDはそれぞれ別の電源のものとします

ローサイド側のスイッチの駆動電源は1になっています。これが可能な理由は、ローサイド側のスイッチはソース端子が共通、つまりすべて同電位であるためです。

それに対して、ハイサイド側はソース端子がそれぞれ別々に分かれているので、電位はバラバラです。そのため、スイッチごとに絶縁電源が必要というわけです。

なお、絶縁電源はGNDも完全に絶縁されていることが必須なので注意してください。

 

ゲートドライバIC

このような高圧の駆動回路で3相のVVVFを作るとなると電源が大量に必要になって大変です。特に、自作VVVFレベルではかなりのコストがかかって大変です。そこで、絶縁された電源を簡単に作ることができるゲートドライバICというものがあります。電子工作レベルではそのようなICを使うと安く楽に回路を作れるのでおすすめと言えるでしょう。第11回ではゲートドライバICについて説明したいと思います。

 

 

回路編 第6回 半導体スイッチの回路

今までは電子部品のお話ばっかりでしたが、今回からは回路的なお話をしたいと思います。今回は1つの半導体スイッチでだけで作れる回路は限られるので、半導体スイッチを複数組み合わせて回路を作るというお話です。

 

今回の回路図では素子をすべてMOSFET(以後FET)の図記号で記載します。また、次回の半導体スイッチの駆動回路のお話のときの都合上、低圧のラジコンのモータドライバを例に紹介を行っていきます。

 

まずは、単純に半導体スイッチを使ってラジコンのモータを回す回路です。

半導体回路1

この回路は、FETONにするとモータが回って、OFFにするとモータが止まる、FETを使ったON/OFF回路です。ですが、ラジコンのモータドライバとして使うには、問題があります。それは、モータを逆向きに回せないということです。この問題を解決するために、電源とFETを1つづつ増やした回路を考えてみます。

半導体回路2

このようにすることで、上のFETONにする場合と、下のFETONにした場合電池の向きが逆になるのでモータの回転方法が逆になります。これにより、目的が達成できたように思えますが、実はこれも完成形ではありません。この回路だと電池が2つ必要とるためコストや重量が大きくなってしまいます。

そこで1つの電源で+-も両方出せる、つまり電源1つでモータの正転も逆転もできる回路があればベストといえます。ここで、FETを4つ使いの以下のような回路にすることで、これが実現可能になります。
半導体回路3

この回路は一般的にHブリッジと言われる回路です。簡単な回路ですが、一応説明をしておきます。まずはモータを正の方向に回したい時は23FETONにします。

半導体回路4

すると緑の線を引いたところに電流が流れますね。電流の向きは矢印を書いた向きなのでモータの左から右です。 次に逆向きに回したい時は14FETONにします。

半導体回路5

今度も緑の線を引いた通りに電流が流れるので、今回はモータの右から左に電流が流れますね。このようにすることで1つの電源からモータを正回転と逆回転をさせることができます。

単相のVVVFの場合も同じ原理で+向きと-向きの電圧・電流を作り出します。また、34FETONにすることでモータにブレーキをかけることもできます。

半導体回路6

ブレーキモードでは緑の線のような回路が構成されるのでモータがショートした状態となってブレーキがかかります。しかし、これをするためには、半導体スイッチ保護用のダイオードが必須です。その理由は半導体スイッチに逆向きに電圧をかけると破損するからです。(ONにしてる時はじつは逆向きに電流流しても大丈夫って話も聞くけどやったことないのでわからないです…)

Hブリッジの回路ではブレーキ時はもちろん、開放状態にしたときにもモータから逆起電流が発生するので、FETに逆向きの電圧がかかってしまいます。すると、何も保護していないFETFETの場合寄生ダイオードがあるので厳密には保護されている)は故障してしまいます。そこで、FETと逆方向にダイオードを追加することで、逆向きの電圧・電流をダイオードに流し、FETを保護します。

 半導体回路7

先ほどのHブリッジにダイオードを追加するとこのようになります。このようにすると、モータのブレーキをしたときなどにFETに逆向きの電圧がかかることはなくなります

 

最後に3相のVVVFの回路図を示します。

半導体回路8

 この回路は、Hブリッジにアーム(上下のFETの組)1つ追加したものとなっています。そのほかは特にHブリッジと差はないと言えます。


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