モータの鳴らし方byHanDen

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2017年08月

回路編 第9回 トランジスタ

いままで半導体スイッチとしてMOSFETIGBTのお話をしてきましたが今回はもう1つの半導体スイッチトランジスタについてのお話をしたいと思います。

 

トランジスタはVVVFなどのデジタル回路ではスイッチとして使用されている部品ですがアナログ回路では電流増幅器などとして使用されます。トランジスタが関係するアナログ回路でメジャーなものと言えばオーディオ回路やラジオなどがありますが今回はここがメインのお話ではないので省略します。

近年ではパワー素子としてトランジスタが使われることは少なくなりました。しかし、今でも電子回路内でのスイッチとして使われることは多少あります。そのため、簡単ではありますがトランジスタの使い方の紹介をしたいと思います。

半導体スイッチの回でもお話したようにトランジスタというのは電流でON/OFFを切り替える電流制御の素子です。ベースに流した電流のhFE倍の電流がコレクタに流れます。  

 

トランジスタの周辺部品の選定

ここで初めにトランジスタを単純にスイッチとして使う場合の回路図を示してみます。

1

ここだけだとMOSFETIGBTの駆動回路とほぼ同じように見えます。しかし、ベース抵抗の求め方が今までとは全然違います。トランジスタのベース抵抗は以下のような手順で求めます。

2

コレクタに流れる電流は設計上で決めておき、その電流値と増幅率からベースに流す必要のある電流が求まります。しかしこの値は最低限度の値であり、このベース電流値ではトランジスタでコレクタに流れる電流を制御することになり、スイッチとして使用するのには適切とは言えません。また、部品の誤差などで場合によってはコレクタに流せる電流が設計値より小さくなるほか、トランジスタでの損失も大きくなる場合があります。そのため、ベースには少なくとも先ほど計算した電流の倍の電流を流すべきと言えます。これより許容できる最大の抵抗値は以下の式で求まります。

 3

実際に抵抗器を選定する際は、これより低い値の抵抗値を使います。なお、スイッチとして使う場合トランジスタを飽和領域で使うのが最適なので、前段回路が許容できるなら少し多めにベース電流を流す、つまりベース抵抗の値を下げると良いでしょう。

 

次にプルダウン抵抗ですが、こちらはプルダウン抵抗なので10kΩ程度を取り付ければ大丈夫です。また、トランジスタの場合はベースが電流駆動という仕様上ベースがハイインピーダンスになることがないのでプルダウン抵抗を省略しても大丈夫です。あくまで保護回路です。

 

増幅率の確保

次は、増幅率hFEの大きさについてのお話です。増幅率が高ければ少ない電流でスイッチを駆動できます。しかし、基本的に容量の大きな素子では一般的にhFEが低いという問題点があります。増幅率の目安としては、小信号用のトランジスタは増幅率が百から数百程度あり、大電流に耐える大型のトランジスタは百に満たない素子が多いです。そのため、大電流に対応する半導体スイッチを動かすためにはベース電流も多く必要になります。

そこで増幅率を稼ぐためにトランジスタの前段にさらにトランジスタを接続するダーリントン接続と呼ばれる回路を組むことがあります。ダーリントン接続の回路図は以下のようになります。

4

回路としては、トランジスタのベースにトランジスタを付けた単純な回路です。これによって増幅率の近似はTr1の増幅率とTr2の増幅率を掛け合わせたものになります。

なお、厳密な増幅率は以下のように求めます。

 5

厳密な計算としてはこのような計算ができますがややこしさに対して計算結果の差がそこまで大きくないです。例としてTr1の増幅率が100 Tr2の増幅率が20として計算をしてみます。単純な掛け算、正式な計算の順です。
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しかし、このように複雑な計算を行い算出した厳密解と近似の計算の誤差はあまり大きなものではありません。そのため、増幅率の重要度が低い場合は近似式で計算しても問題ないでしょう。

 

近似と厳密解の計算例

例としてTr1の増幅率が100 Tr2の増幅率が20として計算をします。単純な掛け算、正式な計算の順です。
キャプチャ


計算結果としては5%程度の誤差がでましたが、実際のパワー回路の設計では素子の増幅率のばらつきの方が大幅に大きいので特に気にする必要はありません。

 

今回説明したダーリントン接続のトランジスタを1つのモジュールにしたものもあり、それをダーリントントランジスタと言います。このダーリントントランジスタは増幅率が高く耐電流も比較的大きいという特徴があるのでこのトランジスタが使える範囲ではダーリントントランジスタを使えば楽に回路を組むことができます。

トランジスタで大電流の回路を組む場合はこのようにダーリントン接続を使用して順次電流値を高めて大電流をスイッチング可能にします。なお、MOSFETIGBTと違い前段回路をトーテムポール回路にしなくてもよいのがメリットともいえるかもしれません。

 

トランジスタの選定方法

基本的にはIGBTに準じた計算方法で選びます。耐圧と耐電流が実使用する電圧・電流を満たしていることはもちろん発熱に対する損失も計算する必要があります。基本的に損失は順方向電圧降下と電流の積とスイッチング損失なのでIGBTの損失計算と同じように計算できます。なお、スイッチング速度が遅いのでスイッチング損失はIGBTに比べると非常に大きな値となります。

 

おまけ

アナログ回路でのトランジスタは電流増幅器として使われますので、目的の電流増幅率に応じてベース抵抗等を求める必要があります。また、トランジスタの増幅率のばらつきによる回路の性能差抑えるために、半固定抵抗を用いる場合も多いです。

トランジスタには今回紹介したエミッタをGNDに接続するエミッタ接地のほかに、コレクタを接地するコレクタ接地やベースを接地するベース接地などいろいろな使い方があります。

回路編 第8回 ゲートドライバ

ゲートドライバICの使い方を記事を新たに書き直しました。
http://vvvf.blog.jp/archives/6572197.html

こちらの方が図が多くわかりやすいかなと思います。

ゲートドライバICの機能

ゲートドライバICは名前の通りMOSFTIGBTのゲートを駆動するためのICです。内部の出力部には前回紹介したトーテムポール回路が内蔵されているほか、デッドタイムの自動挿入機能(一部非対応のものあり)ゲート駆動電圧の生成機能です。つまり、このICがあれば1つのゲート駆動電源ですべてのスイッチのゲート駆動ができてなおかつ高価なトーテンポール回路を内蔵したフォトカプラも不要というわけです。

 

ブートストラップ昇圧の仕組み

ゲート駆動の昇圧機能の仕組みと注意点の紹介をします。ゲートドライバICに内蔵されている昇圧機能は、ブートストラップと呼ばれるチャージポンプの一種です。

原理は、コンデンサに電荷を貯めてそのコンデンサに貯めた電荷を電源と直列に繋ぎ変えることで電圧を上げます。ゲートドライバICの場合はMOSFETがオフの時にコンデンサに電荷を貯め(充電)て、ONの時には充電されたコンデンサをゲートソース間に接続し、ゲート駆動電源にします。

これにより、1つのゲート駆動電源ですべての半導体スイッチを駆動できます。しかし、この原理上1つ問題があります、それはコンデンサに充電する時間を設けないとゲート駆動ができないということです。つまり、ハイサイドのMOSFETをずっとONにしているとコンデンサへ充電することができないので、ある程度の周期でハイサイド側をOFF・ローサイド側をONにする必要があります。(MOSFETIGBTのゲートは絶縁されているのでONになったあとは電流が流れないように思えますが、実際には半導体スイッチやゲートドライバ等の漏れ電流で多少の電流が流れます)つまり、特殊な回路を組まない限り常時ONが必要な回路では使用できないというわけです。

この点を理解したうえで回路設計を行う必要があります。

 

ゲートドライバICの選定方法

メインとなるゲートドライバICにもいろいろな種類があります。ハイサイド側・ローサイド側両方のスイッチを駆動できる製品のほか、昇圧機能を持たずローサイド側のみを駆動できる製品もあります。また、ハイサイド側・ローサイド側を独立してして駆動できる製品もあれば、入力信号のHLでハイサイド側・ローサイド側のON/OFFが切り替わる製品もあります。ですので用途に応じて選ぶ必要があります。

今回はハイサイド・ローサイド両対応でそれぞれ独立して駆動できるIR2110を使用します。なお、この製品にはハイサイド・ローサイド切り替え時のデッドタイムの挿入機能はありません.

データシートのURL:

https://www.infineon.com/dgdl/ir2110.pdf?fileId=5546d462533600a4015355c80333167e

英語ですが何とか読み解くことができるとは思います。

 

周辺回路の部品の選定

何もない状態では、周辺回路に何が必要かというのもわかりにくいのでデータシートに必要な回路図をデータシートから引用します。

IR2110

ゲートドライバICの周辺回路はこの回路図のように組む必要があります。

入力側(左側)のコンデンサはIC周辺に良く取り付けるパスコンですので、0.1μFから1μF程度のものを取り付けます。

右下のコンデンサは次にIRの資料を読み解くと次に紹介するブートストラップコンデンサの10倍の容量のコンデンサを取り付ける必要があると書かれています。ただし、パスコンとして扱って0.1~1μF程度のコンデンサを取り付けても、安定性や特性を除くと回路としての動作は確保できます

右上のコンデンサはブートストラップコンデンサです。ハイサイド側MOSFETのゲート駆動に使う電力はこのコンデンサにため込みます。そのため、計算を行ったうえで容量を出す必要があります。

 

ブートストラップコンデンサの容量計算

ブートストラップコンデンサの計算方法はゲートドライバICを製造しているIR社から分かりやすい資料が出ているのでこれをもとに計算します。

まずはURL

https://www.infineon.com/dgdl/Infineon-dt98-2j.pdf-AN-v01_00-JA.pdf?fileId=5546d46256fb43b3015756f4cf4643fb

この資料のpage2 の式1にこのコンデンサの最小電荷の計算式が書かれています。

 ir2110 式1 

この式でコンデンサの最小電荷量が求まります。ここで注意が必要なのがハイサイドスイッチのゲート電荷量です。これはゲート容量と異なるので注意が必要です。ゲート容量は単位が[pF]などのファラッドですが、ゲート電荷量は単位が[nC]などのクーロンとなります。データシートを読むとMOSFETの場合は大体データシートにゲート容量と合わせてゲート電荷量が書かれていますが、IGBTの場合書かれていない場合が多いです。この場合はゲート容量からQ=CVの式で算出できますが、MOSFETのデータシートを読むとゲート電荷量の方が倍程度大きい場合がありますので今回はQ=CVの式を2倍にした以下の式で近似を行います。

 ir2110 式2

これにてブートストラップコンデンサの必要な電荷量が求まりました。これを必要な要領に変換しますが、資料にも書かれている通り電荷が完全に0になるとゲートをONにできなくなるなどの不具合が発生するため、ここで計算した容量の最低2倍以上の容量が必要となります。このことを考慮したうえの式がpage3の式2です。ここでは上で計算した値を用いた計算式を紹介します。ir2110 式3

この式で最低限のコンデンサの容量が求まりますが、資料に書いてある通り容量の小さいコンデンサを使用すると過充電などが発生しゲートドライバICにダメージを与える場合があるので、大体15倍程度した容量以上のコンデンサを取り付けるとよいでしょう。

また、各パラメータは最悪の状態(周波数だとVVVFの場合非同期のPWM最低周波数or同期モードでの波形の最低周波数、その他のパラメータはデータシートにおける最悪値)で計算を行います。また、電解コンデンサを取り付ける場合は並列にパスコンを入れる必要があります。

 

ブートストラップダイオードの選定

重要な項目としては先ほどの資料に書かれている通りです。

・逆耐圧Vrrmが主回路の電圧以上であること

・最大逆回復時間が 100ns以下であること

・順方向電流IQbs(ゲート電荷量)×fmax(最大動作周波数)以下であること

を満たしているなら問題ありません。基本的に特性の良いファストリカバリダイオードを使うと良いでしょう。

 

ゲートドライバICの内部構造

ゲートドライバICの内部の回路は以下の回路で構成されています。データシートから引用しています。

ir2110回路図

左側の入力端子からプルダウン抵抗、シュミットトリガNOT回路、論理回路(RSFF3入力NOR)、レベルシフタ回路とありハイサイド側はさらにレベルシフタ回路やフィルタ回路等を挟みトーテムポール出力、ローサイド側は遅延回路等を挟みトーテンポール出力となっています。ちなみにシュミットトリガ回路というのは入力のHLの閾値を超えた時のみにHLが切り替わる回路で入力が高速に切り替わることなどを防いでくれます。RSFFは入力信号の保持を行っています。ここではあくまで紹介ですので、詳しくは各回路の名前で検索してください。


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