2019/12/25
KiCad5対応の記事を公開しました。
http://blog.handen.net/archives/21338893.html
一旦目次にリンクしますので読みたいページを選択してください。

 前回は
KiCadのインストールとオフライン環境下で使用するための設定方法を紹介しましたが、今回からは本格的に基板を設計するお話をしていきたいと思います。

最初に、初期設定の時に紹介した方法(あの時は仮の名前で設定しました)で、プロジェクトを作成しておきます。

回路図1

まずは↑1の回路図のようなアイコンをクリックしてEeschemaを起動します。

回路図2
*2 起動画面

起動するとこのような画面が表示されます。表示されたメニューについて紹介します。

1:ページ設定 回路図のシートの大きさや製作者名などを設定できます。

2:回路図の部品をアノテーション 回路図を作成した後に各部品に番号を振る機能です。
3:エレクトリカルルールチェックの実行 描いた回路図に電気的な異常がないかどうかをチェックする機能です。

4:ネットリストの生成 描いた回路図を基板設計のツールに受け渡すデータを生成する機能です。

5:コンポーネントを配置 回路図の要となる回路の部品等の配置をするツールです。

6:電源ポートの配置 電源やGNDの部品の配置を行うツールです。

7:ワイヤーを配置 部品同士をつなぐ配線を描くツールです。

8:バスを配置 複数の配線をひとまとめにしてつなぐツールです。大規模な回路にならないと使うことはないと思うので紹介はしません。

9: 空き端子フラグを配置 マイコンやコネクタ等で使用せず空きになっている端子に取り付けるフラグです。エレクトリカルルールチェックでエラーが出ないようにするために使います。

10:ジャンクションを配置 ワイヤーの交点を接続する際に使用します。

11:グローバルラベルを配置 回路図でラベルを配置したい場合に使用します。同じ名前のラベルは回路図上で接続されたとみなされるので注意してください。

12:アイテムを削除 部品や配線等を削除したいときに使います。

それでは、回路図の作成にかかりましょう。

まずは製作する回路の規模に応じてページサイズを設定します。小さすぎると配置しにくくなるので少し大きめに設定しておくといいでしょう。あとから変更することもできるので最初はそのままでも大丈夫です。

回路図3

ページ設定ができたらまずは部品の配置していきます。

2の→5をクリックして部品の選択モードに切り替えます。カーソルが鉛筆に変わっていることを確認して、部品を配置したい場所で、左クリックをします。すると、「コンポーネントを選択」ウインドウが表示されるのでその中から、配置したい部品を選びます。

回路図4

種類別に分類されているのでその中から選べます。また、←の「フィルター」のところに部品名を入力して検索をかけることもできます。

回路図5
  ちなみに、KiCadのライブラリでは画像のように同じNchMOSFETでも端子の配置順に複数登録されているものがあります。この場合は必ずデータシートを確認して使用する部品に適合した部品を選択します。(使用する部品の型番ごとにピン配置が異なる場合があるためです)部品名で端子の配置順が区別できるほか、各ピンに振られている番号で区別することもできます。画像の場合は左側の端子からゲートドレインソースの順に並んでいるMOSFETを選択しています。

なお、抵抗器やコンデンサ、トランジスタやMOSFETなどはここに登録されている部品を使用できますが、IC類ではここでは登録されていない場合があります。その場合は部品を自分で作成するか、次回紹介するRSコンポーネンツが提供している「PCB Part Library」を利用します。

必要な部品を選択出来たら、「OK」をクリックして部品を図面に挿入します。

 

部品の挿入ができたら、次は部品の型番または定数とフォットプリントの設定を行います。「Esc」キーを押して通常モードに戻った後、配置した部品上にカーソルを置いた状態でキーボードの「E」キーを押すか部品を右クリック、「コンポーネントを編集」、「編集」(図中←)と進み、コンポーネントプロパティーを開きます。
回路図6-1

ここで、回路図上で部品の定数やほかの部品と重なって表示されている場合は下図のように「明示的な選択」というメニューが出てきます。今回設定するのはコンポーネントの設定なので、「コンポーネント〇〇」のほうを選びます。(複数の「コンポーネント〇〇」が表示された場合は編集したいほうを選びます。)これ以降で同様のメニューが出てきた時も操作したいほうを選んでください。
回路図6-2

回路図6
コンポーネントプロパティーが開いたら、まず、←1の「定数」の部分に型番または部品の定数を設定します。MOSFETなど部品では型番を抵抗器やコンデンサなどの場合は定数を入力するとよいでしょう。

次に←2の「フットプリント」を選び、右下の→3で示した「フットプリントの割り当て」をクリックして、フットプリントの選択画面に進みます。

回路図7

この中から、自分が使用する部品に適合したフットプリントを選択します。

探すライブラリはICの場合は「Housings」の中に、MOSFETやトランジスタなどの場合は「TO_SOT_Packages」、抵抗器やコンデンサ、ダイオードやコネクタなどはそれぞれの部品ごとに英語名でライブラリがあるのでそれを使用します。ちなみにライブラリ名でTHTとあるのはスルーホール部品で、SMDとあるのは表面実装の部品です。このライブラリの中から、抵抗器やコンデンサなど場合は部品の大きさやピンのピッチに適したものを、IC類やMOSFETやトランジスタの場合はデータシートに書かれた、パッケージの名前と同じ名前のフットプリントを選びます。(パッケージの名前が書かれていないときは、部品の大きさなどからGoogle検索等でパッケージ名を探し当ててください)

フットプリントは種類がかなり多いですが、必ず正しいフットプリントを選ぶようにしてください。間違えると基板が完成した時に部品が入らなくなってしまいます。

もしも、この中にフットプリントが存在しない場合は自分でフットプリントを作る必要があります。その手順は後の回で軽く紹介したいと思います。

正しいフットプリントが選べたら、フットプリント名をダブルクリックして、フォットプリントを確定します。すると、コンポーネントプロパティーに戻ります。そして、「OK」をクリックしてフットプリントの設定を確定させます。

 

部品の挿入とフットプリント・型番or定数の挿入の操作を繰り返して、設計する回路に必要なパーツをすべて回路図上に配置します。ちなみに、部品はコピーすることができるので、同じパーツが複数ある場合は、フットプリントを設定したあとでコピーをすると手順を大幅に減らすことができます。

コピーの方法は、コピーしたい部品上にカーソルを置いて「C」キーを押すまたは部品上で右クリック,「コンポーネントをコピー」(図中←)を選択をクリックします。
回路図8

すると、マウスカーソルの先端にコピーされたパーツがくっつくので、部品を置きたい場所で左クリックすると。部品を配置できます。

回路図9

図ではカーソルがないですが、コピー中のパーツは少し薄く表示されています。

また、部品を右クリックしたメニューの「コンポーネントの方向」の中には回転やミラーなどがあるので、必要に応じて使うとよいと思います。(回転はキーボードの「R」キーを押しても実行可)また、「コンポーネント〇〇を移動」を選択すると(またはキーボードの「M」キーを押しても実行可)部品の位置を移動することもできます。ドラッグに関しては現時点では使用する必要はありません。(移動と同じ)
回路図10

 

部品の配置ができたら、次は部品同士をワイヤーで接続していきます。部品配置が完全に終わる前でも、部品配置がある程度進んだ段階でワイヤーの接続作業に入ってもいいかもしれません。

2の→7をクリックしてワイヤーの接続モードに入ります。

回路図11

ワイヤーの接続モードに入ったら、↑で示したような各部品のピンの先端の未接続の印(〇又は□の印)の部分をクリックしてワイヤーの接続を始めます。

回路図12

続いて、ワイヤーの反対側を接続したい部品の未接続の印の上でクリックするとワイヤー(配線)が接続され、接続された箇所の未接続の印が消えます。ここで、印が消えていない場合は配線が接続されていないので、戻って再度接続を行います。

図のOUTタグの所などワイヤーを分岐する個所では、未接続の印の代わりにワイヤーの途中をクリックしてワイヤーをワイヤーに接続をします。この際に接続のジャンクション印(下図→1のような●印)が表示されていることを確認します。もし、接続したい交点でジャンクション印が表示されてないときは、図2の→10のジャンクションの配置モードに入り、接続したい交点上をクリックしてワイヤー同士を接続します。逆に接続しない箇所で誤ってジャンクション印が表示されている場合は図2の→12の削除モードでジャンクションを削除します。(削除対象を右クリックして削除を選ぶことや、削除対象にカーソルを置いて「Delete」キーでも削除可)

回路図13

すべての部品同士をワイヤーで正しく接続できるまでこの作業を繰り返します。配線途中で間違えたところに配線した場合は先述のジャンクションの削除と同様に配線を削除してください。また、コネクタやICなどで端子を未接続のままにする場合は、図2の→9の「空き端子フラグ」を未接続の端子に配置します。

 また、配線を始めたから部品を移動する場合は、接続した配線を維持したまま部品を移動する「ドラッグ」と、接続した配線を無視して部品のみを移動する「移動」を使い分けるとよいです。


すべての配線の接続が終われば次は、回路図の各部品に番号を割り当てるアノテーションという作業を行います。図2の↑2をクリックして「回路図をアノテーション」を開きます。


回路図14

基本的に初期設定のままで問題ないので下部の「アノテーション」をクリックしてアノテーションを実行します。

回路図15

アノテーション作業は取り消しができないというメッセージが出るので、確認して「OK」をクリックするとアノテーションが実行されます。

アノテーション後に回路図を変更してパーツが増えた場合は再度アノテーションを実行してください。また、状況次第で一度アノテーションクリア、再度アノテーションをすれば、再度部品の番号がきれいに並ぶという使い方もできるので、使い分けをおすすめします。

 

各番号に部品番号が振られたら、描いた回路図に電気的な異常がないかどうかの確認を行います。図2の↑3「エレクトリカルルールチェック」をクリックして「エレクトリカルルールチェック(ERC)」を開きます。

回路図16

下部の「実行」をクリックするとエラーチェックが始まり、問題個所があれば自動的に警告またはエラーが出てきます。


回路図17

サンプルのような回路でチェックを実行するとこのようにエラーメッセージができます。図の上2つのエラーは電源端子に「PWR_FLAG」が配置されていないため起きるエラーです。図2の→6の「電源ポートを配置」から下図のような「PWM_FLAG」を電源とGNDに接続することで解決します。

上から3つ目のようなエラーはピンがどこにも接続されていないときに出るエラーです。一番下のエラーはラベルを配置したときに、そのラベルがどことも繋がっていないときに出るエラーです。
回路図5

 

他にも、各パーツのピンの設定が「不特定」になっている場合には下のように「ピン間の衝突問題」といったエラーが表示されることもあります。この対策は次回紹介します。

 回路図19

また、絶対にやっていはいけない例として、出力ピン同士をつないだ場合などにもエラーが表示されると思います。

 

ERCで出たエラーを解決または問題ないと判断できた場合は回路図作成の最後の作業である「ネットリスト」の生成に移ります。これはプリント基板を描くソフトウェアに部品のリストや接続情報などを送り出すためのファイルを生成する機能です。

24「ネットリストの生成」をクリックして「ネットリスト」を開きます。
回路図20

KiCadのプリント基板エディタはPcbnewなのでそのまま右の「生成」をクリックしてネットリストを生成します。保存先はデフォルトのままで大丈夫です。

これで、回路図の作成は完了です。

KiCadは大変高機能なのでここで紹介した機能以外にも多数の機能があると思います。それらは使いながら慣れていけばよいと思います。(筆者もとても使いこなせてないので…)

 


最後におまけとして、筆者がインバータの第2弾の企画で設計したステッピングモータから音楽を鳴らす基板の回路図を載せておきます。実用的な回路の場合はこれくらいの規模の回路になることもよくあると思います。

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