今回からは基板のアートワークを行うPcbnewの使い方の紹介です。
起動するとこのような黒い画面が表示されます。Pcbnewはメニューが非常に多いのでツールバーを3つに分けて機能を紹介します。
なお、本章では「モダンツールセット」を使用して解説を行います。(設定は上部メニュー「設定」→「モダンツールセット(アクセラレータA)」を選択します。)
まずは上部のメニューから
↓1:基板セットアップ プリント基板のレイヤー設定やデザインルールの設定を行う項目です。配線幅やビアの穴径などはここで設定します。
↓2:ページ設定 プリント基板エディタの全体のサイズを設定します。プリント基板でA4を超えることはまずないと思うので、基本的にはそのままで大丈夫です。
↓3:プロット プリント基板製造会社に送るデータを生成する機能です。
↓4:画面の再描画 フットプリントのデータを変えたときなどに表示をすぐに反映させる機能です。基本的には自動で反映されるので使うことはないと思います。
↓5:基板またはページに合わせてズーム 拡大しすぎたときや縮小しすぎて現在の場所がわからなくなった時に拡大率を初期の状態に戻す機能です。
↓6:フットプリントエディターを開く フットプリントを編集する画面を開きます。
↓7:フットプリントビュアーを開く 登録されているすべてのフットプリントを表示させる画面を開きます。
↓8:ネットリストをロード 回路図エディタで出力したネットリストを読み込む機能です。
↓9:回路図から基板を更新 ネットリストを介さずに回路図からフットプリントや接続状態等の回路の情報を読み込む機能です。
↓10:デザインルールチェックを実行 設計した基板がデザインルールに反していないかを確認する機能です。
↓11:レイヤー選択 基板の表裏の配線や基板印刷などのレイヤーを切り替える機能です。
↓12:Eeschemaで回路図を開く 回路図を編集したいときなどにEeschemaを開きます。
↓13:Pyhonスクリプトコンソールの表示/非表示 スクリプトを実行するためのコンソールの表示非表示を切り替える機能です。
次に左側のメニューです。ここは主に表示関連のメニューが多いです。
図5-3 左メニュー
←1:デザインルールチェックを無効(有効)化 デザインルールに違反した配線を引くことできなくするリアルタイムDRCの機能の有効無効を切り替えるボタンです。理由がない限り使うことはありません。通常はこのDRCを有効状態(画像のように選択されていない状態)にします。また、この機能はレガシーツールセットでのみ有効です。KiCad5では通常はモダンツールセットとなるためこの機能は使えません。
←2:グリッドを非表示(表示) 画面のグリッドの表示非表示を切り替える機能です。グリッドがない状態は作業しにくいので通常は有効にしておきます。
←3:mm(inch)単位
表示の単位を切り替える機能です。日本では基本的にmm単位で使われるのでmm単位を選択しておきます。
←4:ボードのラッツネストを非表示(表示) 配線が未接続のコンポーネントの接続先同士を結ぶ線(ラッツネスト)の表示非表示を切り替える機能です。
←5:ゾーンの塗りつぶしを表示(非表示、アウトラインで表示) ゾーン(ベタグランドなど基板のパターンを面で作る箇所)の表示の切り替えです。好みや必要に応じて使い分けます。
←6:アウトライン(塗りつぶし)モードでパッドを表示
パッドの表示をアウトラインモード(パッドのふちのみ表示)と塗りつぶしモードで切り替える機能です。基本的に塗りつぶしモードの方が見やすいと思います。
←7:アウトライン(塗りつぶし)モードでビアを表示 ビアの表示をアウトラインモード(パッドのふちのみ表示)と塗りつぶしモードで切り替える機能です。
←8:アウトライン(塗りつぶし)モードで配線を表示 配線の表示をアウトラインモード(パッドのふちのみ表示)と塗りつぶしモードで切り替える機能です。塗りつぶしモードの方が見やすいです。
←9:ハイコントラスト表示モード 画面の表示の色合いを変える機能です。基本的に使わないと思います。
続いて左側のメニューです。ここは基板の中身の編集系のメニューが主です。
図5-4 右メニュー
←1:ネットをハイライト 任意のパッド・配線を選択すると配線で接続されるべきパッドがすべてハイライト(強調)表示される機能です。
←2:フットプリントを追加 回路図に無い部品を追加する機能です。主に固定用の穴やロゴなどを追加するときに使います。
←3:配線を追加 部品のパッド同士を接続する配線を行う機能です。
←4:ビアを追加 基板中にビアを追加する機能です。ベタグランドの上層下層間の接続などに使います。
←5:塗りつぶしゾーンを追加 ベタグランドなど基板全体または一定の範囲を銅箔で覆いたいときに使います。
←6:キープアウトエリアを追加 部品や配線を配置することを禁止するエリアを設定する機能です。
←7:図形ライン(円、円弧、ポリゴン)を追加 基板上に図形を配置するときや基板の外形線の描くときに使います。
←8:銅体層または図形層にテキストを追加 基板上に文字を配置したいときに使用します。
←9:アイテムを削除 フットプリントや配線を削除するときに使用します。
←10:距離を計測 基板内の任意の場所の距離を計測する機能です。
5-1基板の外形線の作成
最初に、レイヤーを「Edge.Cuts」に変更します。
図5-5 レイヤー
画面右側の図のようなレイヤー表示部の「Edge.Cuts」(図5-5←)の右側の青い▶が表示された箇所(図の↑と←の交点部)をクリックするとレイヤーが切り替わります。(ほかのレイヤーに切り替える場合も同様に各レイヤー名の左の空白(↑の列)をクリックします)(上部のメニューからの切り替え(図5-2の↓8)も可能)
続いて外形線を引きます。「図形ラインを追加」(図5-4←6の一番上)をクリックして直線の図形を描くモードに切り替えます。カーソルが鉛筆に変わったことを確認して、外形線を引き始めたい場所でクリックして、外形線を引き始めます。
カーソル座標のdx,dyを確認しながら、外形線の角にしたい場所でクリックします。すると外形線の一辺が作成されます。dx,dyは線を引き始めた箇所からの距離なので斜めの線でなければ線の長さと同じです。四角形のほかの辺も同様に描き、4辺すべてが描き終わる箇所(外形線の開始地点と同じ場所)でダブルクリックをして、外形線を確定させます。(ダブルクリックすると引いた線が確定される仕様なので、外形線の途中でダブルクリックをして一旦確定させて、再度終端地点から線を引くなど複数回に分けて描くことも可能)
図3-7のように黄色の線の四角形ができていれば、外形線は描けています。
5-2 ネットリストの読み込み
上部のツールバーの「ネットリストをロード」(図5-2の↓8)をクリックして「ネットリスト」を開きます。
初めにネットリストのファイルをフォルダアイコン(図5-8の→1)から開きます。初回のネットリスト読み込みの際は特に設定の変更をせずに、下部「基板を更新」(↓2)をクリックしてネットリストの読み込みを始めます。ネットリストの読み込みをする際に、取り消しができないというメッセージが表示さるので「はい」をクリックします。回路図エディタでフットプリントを正しく設定していた場合は特にエラーがなく終了します。
回路図エディタで正しくフットプリントの設定ができていない場合、「メッセージ」に下図のようなエラーが表示されます。この場合、Eeschemaでエラーが表示されたコンポーネントのフットプリントの設定を修正して、再度ネットリストを出力し、Pcbnewで読み込みをします。
また、基板作成中の仕様変更などでネットリストを再度読み込む場合は、状況に応じてそれぞれの設定を変更する必要があります。
フットプリントを更新:回路図エディタで部品のフットプリントの変更を行った場合はチェックを入れる必要があります。
複数のネットを短絡している配線を削除:配線の接続先が変わった際などに繋がってはいけない箇所がつながっている場合にその配線を削除する場合はチェックを入れます。
余分なフットプリントを削除:仕様変更により回路図から削除されるなどネットリストから消えた部品を削除する場合はチェックを入れます。ただし、固定穴などPcbnew上で追加した部品も削除されるので注意する必要があります。ただし、後述の「フットプリントのロック」を行った場合は削除されません。
孤立したパッドのネットを削除:配線が接続されず孤立してしまったパッドのネットを削除する場合はチェックを入れます。
ネットリストの読み込みが完了すると、下図のように読み込まれたフットプリントが表示されます。KiCad4では重なって出てきましたが5では改善されて重ならなくなりました。
なお、図5-2↓9の「回路図から基板を更新」でもネットリストの読み込みが可能です。こちらを使う場合は回路図エディタでネットリストの出力が不要になります。
5-3 デザインルールの設定
デザインルールは、配線の幅や間隔、ビアの大きさなど、基板を加工する際に守らなければならないルールです。
図5-2↓1「基板セットアップ」を開きます。図5-10←の「デザインルール」からデザインルールの設定画面を開きます。
デザインルールエディターの上部の「ネットクラス」の中に初期状態ではクリアランスが0.2mm 配線幅が0.25mm ビア径が0.8mm ビアドリルが0.4mmに設定されています。このうちクリアランスには配線同士の間隔(隙間)とビアや穴同士や配線との間隔をすべて一括にくくったものになっています。「マイクロビア径」と「マイクロビアドリル」については4層とかの基板にならない限り使うことはないので2層基板では設定の必要はありません。
業者に注文する場合は、業者で定められた、デザインルールを入力します。ただし、デザインルールギリギリでは製造に失敗する可能性があるので基本的には推奨値以上である程度余裕を持った値を入力しておきます。Elecrowに注文する場合は、「クリアランス」は0.203以上、「配線幅」は0.203以上の自分の希望する配線幅、「ビア径」と「ビアドリル」はデフォルト(0.6mm 0.4mm)のままにしておきます。
また、電源ラインなどで配線幅を変えたい場合は配線ごとにデザインルールを設定することが可能です。
デザインルールエディターの中ほどの「+」(図3-11↓1)をクリックしてデザインルールを追加します。するとネットクラスの一覧に新規のデザインルールが表示されるのでその中の←2部に追加するデザインルールの名前(正式にはネットクラス名と言います)を入力します。
次に新たなデザインルールを設定する配線を選びます。画面右下の「ネット」の中から変更したい配線を選び右側(→3)のドロップダウンリストから新たなデザインルール(変更先)を選択します。
しかし、VccやGND以外で配線を太くする場合、配線のネット名を調べる必要があり大変です。そのため、配線幅を変更したくなった時にその都度「基板セットアップ」を開き、配線幅を変更するのもありかもしれません