電子部品の細かな話の第1回目は抵抗器です。
抵抗器というと内部に電気抵抗を持っているだけの電子部品ですが、使い方は本当にいろいろあります。使い方によって同じ部品で済む場合もあれば、違う部品を使う場合もあります。
抵抗器の種類
カーボン抵抗
一般的に電子回路で使う抵抗と言えばこのカーボン抵抗です。炭素を抵抗体とした抵抗器で安くてそこそこの精度を持った抵抗器です。
金属皮膜抵抗
カーボン抵抗では要求される精度を満たせないくらい精密な抵抗値が必要な場合に使う抵抗器です。カーボン抵抗よりは価格がちょっと高いかなと。
酸化金属皮膜抵抗
カーボン抵抗では電力が足りないときに使う抵抗。小型で比較的大きな電力を扱えるというのが特徴です。
チップ抵抗
細かな場所に回路を押し込みたい時などに使う抵抗器。基板の表面に実装できるのでコンパクトになりますが、はんだ付けがしにくいので趣味で使う分にはあまり使わないかなあと。抵抗体は金属皮膜抵抗と同じはずです。
セメント抵抗
酸化金属皮膜抵抗をセメントで固めたもの。放熱性が高くなるので、大電力を扱えます。
電子回路で使う抵抗値固定の抵抗器は大体この5種類あれば十分かなと思います。
他には巻線抵抗器や大電力に耐えるホウロウ抵抗器とかメタルクラッド抵抗器とかありますがパワーのある回路を除き、電子回路レベルで使うことはあまりないです。
抵抗値固定でない抵抗器
可変抵抗
つまみを回すことで抵抗値を変えることができる部品。基本的には3ピンの部品で両端の2ピン間は可変抵抗記載の抵抗値で固定されており、中央のピンと両端のどちらかのピンの間の抵抗値が0から可変抵抗に記載の抵抗値の間で変わります。両端を電源とGNDにつなぐと分圧の原理で回転角度のセンサとして使えます。抵抗値の変わり方には複数の種類がありAカーブ、Bカーブ、Cカーブって呼ばれています。基本的には線形的に抵抗値が変わるBカーブが使われます。Aカーブはオーディオのボリュームに使われますが、Cカーブはあまり使われないと思います。
半固定抵抗
可変抵抗のつまみがないバージョンでドライバーなどを使って回すことで抵抗値を変更します。調整は必要なものの、値を変更することが少ない箇所に使います。カーブはBカーブのみです。
抵抗値の読み方
抵抗器は大型ものやチップ型のものでは数字で抵抗値が書いていますがたいていの抵抗器は色で抵抗値が示されています。その色の意味と抵抗値の読み方を説明します。
まずは抵抗器の色の意味を下の表でご覧ください。
初めにこの表で色を数字に変換します。
続いて出て来た数字を抵抗値に変換するのですがそれぞれの桁に意味があるので下の図をご覧ください。
この図では3.3kΩの抵抗器の意味を示しています。読み方は図の左から10の位 1の位 桁数 精度となっており、桁数と精度の間は他のラインの間隔よりも広くなっています。
これより10の位と1の位を合わせて33 桁は10^2 精度は±5%と読めます。これを合わせると 33×10^2 = 3300 = 3.3kΩ ±5%と読めますね。
回路図の図記号
下の図の通りですが左のギザギザの方が古い書き方で右の四角の方が新しい書き方です。JISの観点からいうと、右の四角の表記の方がいいのですが、昔からの名残で左のギザギザを使うこともよくあります。
抵抗器の用途
電流制限
LEDやFET・IGBTのゲートなどに流れる電流を制限して、LEDの過電流による破損防止や、FET・IGBTのスイッチング速度調整を目的として取り付ける。
分圧
マイコンの入力モード時などの入力インピーダンスが高い電子部品に電源とグランドの間の任意の電圧を印加したい場合に使用します。回路構成は電源とグランドの間に2本以上の抵抗器を入れたものとなっています。それらの抵抗値の値により分圧により出力される電圧が変わります。詳細は後半の設計の章で紹介します。
ヒーター
抵抗器に電流を流すことで電力を消費させ、その発熱を利用したものです。おもにストーブなどの熱を取り出すことを目的とした使い方。
電力消費
基本的にヒーターと同じであるが、熱を目的とするのではなく、回路内で発生した電力を熱に変換して消費させるのが目的。電車では発電ブレーキや抑速ブレーキで発電した電力を消費する際に使用される。
プルアップ・プルダウン抵抗
スイッチのみをマイコン入力に接続すると正しくスイッチの状態を読み込めない問題を解決するために使用される。詳細は後半で紹介します。
各用途での設計法
抵抗器のパラメータ設計では基本的にはオームの法則と電力の計算式さえ知っていればなんでも計算ができます。
オームの法則
V:電圧[V]
I:電流[A]
R:抵抗[Ω]
として
V=IR
電力の計算式
P:電力[W]
I:電流[A]
V:電圧[V]
として
P=IV
電流制限の設計法
オームの法則をそのまま使って計算を行いますが注意点があります。それは計算で使用する電圧のパラメータが「抵抗器に加わる電圧」であることです。
以下のように計算を行います。
Vr:抵抗器に加わる電圧[V]
I:電流[A]
R:抵抗[Ω]
として
Vr=IR
この式を抵抗値基準にすると以下のようになります。
例としてLEDに流れる電流制限の計算をしてみます。
LEDの適正電流Ifが10[mA] 順方向電圧Vfが1.0[V] 電源電圧Vが5.0[V]とした場合のLEDの電流制限抵抗の計算をしてみます。
抵抗値は抵抗器に加わる電圧を基準に計算するので、電源電圧からLEDの順方向電圧を引いたものを電流で割った式になります。この式で計算をするとLEDの電流制限抵抗の値は400[Ω]となりました。しかし、計算で出た値の抵抗値がそのまま販売されているとは限りません。というか基本的にはないことが多いです。そのため計算した値より大きい側で販売されている抵抗値を使用します。秋月のサイトで400Ω以上の抵抗値で最も低い抵抗値を探すと470Ωがあるので今回の場合この470Ωを使用すればよいです。
これで、抵抗値が決定されましたが、もう一つ計算しなければならない個所があります。それは抵抗器での損失による消費電力です。電子回路の小信号部ではほとんど考慮する必要はありませんが比較的大きな電力を抵抗器で消費する場合この計算が必要です。
例えば、抵抗器にかかる電圧が20[V] 電流が0.1[A]だった場合抵抗器での消費電力は
P = 20[V]×0.1[A]=2[W]
となります。したがってこの場合抵抗器の許容電力が2[W]以上のものを使わなければなりません。
しかし、先ほどのLEDの電流制限のような低消費電力の回路の場合4.0[V] 10[mA]が抵抗器で消費されており、電力を計算すると 0.04[W]となることがわかります。この場合は一般的に販売されている1/4[W]の抵抗器を安心して使うことができます。
分圧
分圧の設計もオーム法則をそのまま使用できます。
分圧回路の回路図は下の図のような回路です。
ここで、VccからGND間に流れる電流Iはオームの法則により
I= Vcc/(R1+R2)
となります。
次にVoutの電圧を電流Iを用いて表すと
Vout = I×R2
となり
となりR1とR2の抵抗値の比率により出力電圧を変化させることが可能です。
例えば、電源電圧5Vで4Vを出力したい時はR1を1kΩとして
と計算することができます。
この原理を応用すると可変抵抗を使った角度センサーが作れます。
ヒーター、電力消費の設計法
電力を抵抗器で消費させる場合は以下の式で計算できます。
P=I^2×R=(V^2)/R
例えば100[V]で1000[W]のヒーターを設計したい場合は
となります。
プルアップ・プルダウン抵抗の設計法
考え方としては分圧の考えの応用です。
下の図の左がプルダウン、右がプルアップです。
説明はプルダウン抵抗の方で説明を行います。
プルダウン抵抗の方で説明を行います。
SWが開いているとき、スイッチが押されていないとき(A接点の場合)はSWの抵抗値を無限大と考えます。
これを分圧の式で計算すると
Vout = Vcc×(R/∞+R) ≒0[V]
となります。
これより、スイッチが開いているときは0[V]が出力されることがわかります。
逆にスイッチが閉じている、つまり押されている(A接点の場合)ときは、SWが0[Ω]と考えることができます。
Vout= Vcc×(R/R+0)=Vcc
よって、スイッチが閉じているときは電源の電圧がそのまま出力されることがわかりますね。
プルアップの場合はVccとGNDが入れ替わってるだけで、同じように考えればスイッチが開いているときにVccが出力され閉じているときは0[V]が出力されることが明らかですね。
最後に、Rの抵抗値ですが基本的には1~10[kΩ]程度の抵抗値を使うのが一般的です。それ以下だと電流が流れすぎてエネルギーの無駄使い、大きいとハイインピーダンスとなり正しく動作しない可能性があります。