VVVFの作り方の第三回はコンデンサとコイルについてです。

コンデンサとコイルについては本格的な話をするとあまりにも難しいので比較的簡単なところだけかいつまんで解説したいと思います。VVVFを作る上で必要になるであろうことを選んで紹介するつもりです。

 

コンデンサもコイルもどちらもエネルギーをためる性質をもった素子です。しかし、交流の話になると抵抗的な動作をするという少しややこしい特性を持っています。なお、コイルは回路の世界ではインダクタと呼ばれることの方が多いの以後はインダクタと記載します。(コンデンサはキャパシタともいうけど、コンデンサっていう方がしっくりきます)

 

コンデンサの種類

セラミックコンデンサ

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電子回路においてノイズの除去や、水晶の発振、周波数フィルタなどに多くの個所・目的に用いられることが多いコンデンサ。容量は小さいが高周波における特性が良い


 

積層セラミックコンデンサ

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セラッミックコンデンサを積層させることで容量を増加させたコンデンサ。セラミックコンデンサと同じく周波数特性が良いので高周波のノイズ除去などに使われることが多い。また、電力が微小な箇所ではエネルギーをため込む用途で使う場合もある。

 

電解コンデンサ

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上の2種類のコンデンサに比べて大容量であることが特徴である。主に電圧変動(周波数が低いが大きな振れ幅を持つノイズと考えてもよい)を抑えるときや、ある程度の大きさのエネルギーをため込むときに用いられる。周波数特性が悪いため高周波ノイズを取り除くことはできない。(容量が必要かつノイズ対策が必要な場合、電解コンデンサに並列に積層セラミックコンデンサを挿入する)また、極性を持っているので注意が必要である。

 

ソリッドコンデンサ

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電解コンデンサと同じような用途で用いられる。(電解コンデンサの一種ともいえる)電解コンデンサは内部に液体を持っているがソリッドコンデンサは個体のみで構成されているため液漏れの心配がない。そのため寿命が長いのでパソコンのマザーボードなど信頼性が要求される場所に多く使われている。あくまで電解コンデンサの一種であるので極性は持っている

 

基本的にデジタル系やパワー系の電子回路では主にこの4つのコンデンサが使われることが多いです。他にはフィルムコンデンサ(主にオーディオなどのアナログ回路)とか電気二重層コンデンサ(電力をためる用)とかタンタルコンデンサ(電解コンデンサの一種で高周波特性が少し改善されている)とか可変コンデンサ(ラジオの周波数切り替えで使うやつ)とかあります。 アナログ回路ならコンデンサもいろいろ大事ですが、デジタル回路では、ことが足りることが多いです。

 

インダクタの種類

コイルはインダクタとも呼ばれますが、種類と言っても巻き方とか巻き線の太さとか中のコアの差ぐらいしかないので省略します。

 

コンデンサ・インダクタの容量の読み方

基本的に電解コンデンサなど大型のコンデンサは直接容量・耐圧が書かれていますが、セラミックコンデンサや積層セラミックコンデンサなど小型のコンデンサは3桁の数字で書かれているものが多いです。ここではその3桁の数字(一部容量は2)の読み方を紹介します。なお、チップのコンデンサなど何も書かれていないコンデンサはどう頑張っても読めないので、テスターなどで測定してください。

2桁表記のセラミックコンデンサは2けたの数字そのものが容量で単位は[pF]となっております。

3桁書かれているタイプのセラミックコンデンサは抵抗器と同じ読み方をします。上の2桁が値で下の1桁が桁となっています。(誤差はなし)

 

セラミックコンデンサの読み方の例

コンデンサ

左の場合は22[pF]とそのままです。右の場合は10×10^4 [pF] = 0.1[μF]となります。

インダクタについては、きちんと容量を書いているタイプもありますが書いていないタイプもあります。書いているタイプはたいてい容量がそのまま書かれていて単位は[μH]です。

 

コンデンサ・インダクタの図記号

 図記号コンデンサ


左から電解コンデンサ以外のコンデンサ、電解コンデンサ、インダクタの順番です。なお、可変コンデンサの場合は記号中に「矢印」追加されます、

 

コンデンサ・インダクタの用途

コンデンサ

・整流回路における電圧安定化

・高周波ノイズの除去(ハイパスフィルター)

・エネルギー貯蔵

・ローパスフィルター

 

インダクタ

・高周波ノイズの除去

・エネルギー貯蔵

・ハイパスフィルター

 

簡単に用途を出すとこのような感じになります。なお、コンデンサとインダクタで同じ用途で使われているものがありますが回路への接続方法が全く違うので注意が必要です。

コンデンサはノイズの除去やエネルギー貯蔵をする際には信号や電源ラインとGNDの間(並列)に挿入しますが、インダクタの場合は信号や電源ラインに割り込む形(つまり直列)に接続します。一般に電子回路ではコンデンサでノイズ除去を行うことが多いです。エネルギーを蓄える用途は回路によってどちらを使うかが変わってきます。

 

コンデンサ・インダクタの動作

コンデンサやインダクタはエネルギーをため込む素子です。エネルギーをため込むということで、電気を流し始めた時とずっと流しているときでは流れる電流や素子にかかる電圧などが全然違います。コンデンサやインダクタが関連する回路の周辺回路の設計では初期状態と時間がたった状態(一般に定常状態という)の両方の状態を考慮して計算しなければなりません。

まずは単体のコンデンサにある電圧を印加した時にコンデンサに流れる電流を表したグラフです。


コンデンサ過渡1

電源が無限大の電流を流すことが可能だとこのような感じのグラフになってしまいます。コンデンサは電圧をかけた瞬間理論上は無限大の電流を流してしまうのです。そして、無限大の電流が流れた瞬間のあとには電流は0になってしまいます。言い換えると電源を入れた瞬間にコンデンサに蓄えることのできるエネルギ(電荷)を限界まで蓄えてしまいこれ以上入らない状態になります。エネルギーがこれ以上入らない状態だと電流はもう流すことはできないということです。

つまり、コンデンサを含む回路の設計をするときはコンデンサの抵抗が0であった場合と無限大であった場合の両方を考える必要があるというわけです。ただ、無限大の電流が流れるというのはあくまで理論上の話で実際には電源のインピーダンスとか配線の抵抗で流れる電流の制限がかかってしまいます。ですので、何回もON/OFFを繰り返すような回路でなく、コンデンサの容量が小さい場合や電源インピーダンスがある程度ある場合などでは抵抗が0の場合を考えずに設計をする場合もあります。

電源の内部インピーダンスを考慮した場合や電流制限抵抗を取り付けた場合のコンデンサに加わる電流電圧の関係のグラフを載せておきます。

コンデンサ過渡2
コンデンサ過渡3

実用的な回路では大体このような感じの電流電圧波形となります。感覚としてはスマホの充電で考えるとよいかもしれません。0%から60%くらいまでは結構な速度で充電されて(電圧上昇が速い)本体やアダプタも熱くなる(多くの電流が流れる)けど100%に近いところではなかなか充電が進まず本体やアダプタも熱くならないというのとほぼ同じです。

 

次にインダクタの場合を考えます。コンデンサでは電圧を印加した時に流れる電流を考えましたが、インダクタでは電流を流した時に発生する電圧で考えます。回路に挿入するときに直列接続するためです。

電流を流し始めた時に加わる電圧のグラフはこのようになります。

インダクタ過渡1

コンデンサに電圧をかけた時に流れる電流の波形と形が全く同じです。電流を流し始めた瞬間にインダクタに磁気エネルギーが完全にたまりそのあとはエネルギーが入らない、つまり電圧が発生しないということです。要するに、電流を流し始めた瞬間は抵抗が無限大でそのあとは抵抗が0になるというわけです。

続いて、実用的な回路でのグラフです

インダクタ過渡2
インダクタ過渡3

実用的な回路では入力を電圧としています。なお、インダクタ単体に電圧を加えると、一瞬でショート状態となり電流は無限大になって回路が破損しますので禁止事項になります。

 

コンデンサ・インダクタの原理

なぜ、コンデンサやインダクタを使った回路がノイズ除去とか電圧安定化とかローパス・ハイパスフィルターの動作をするのかってことを説明したいと思います。

ノイズとか電圧変動を単独で見ると直流ではなく交流とみることができます。今回はこれがミソとなります。

交流回路におけるコンデンサとインダクタのインピーダンスは

f:交流の周波数

C:コンデンサの容量

L:インダクタの容量

として

印ピーンダンス式

と定義されます。Zcがコンデンサのインピーダンス、Zlがインダクタのインピーダンスです。今回説明するのは一般的にノイズ除去に使われるコンデンサのみとします。

定義式よりコンデンサは周波数が高いとインピーダンスが低くなることがわかります。つまりコンデンサは周波数の高い成分ほど通しやすいということです。ここでノイズと電圧変動を簡単に表したグラフを見てみましょう。


成分

このグラフでオレンジで囲った部分を大まかにみると周波数の低い交流のように見えます。今回はこれを電圧変動と言います。それに対して青で囲った部分は細かな振動をしており、周波数の高い交流とみることができます。これを今回はノイズとおきます。

ここで定義式を見てみましょう。周波数の高い成分は小さな容量のコンデンサでも通してしまいます。つまり信号線や電源線とGNDの間に容量の小さいコンデンサを入れれば、周波数の高い交流成分はGNDに流れてしまいますこれによってノイズが消えると言えます。次に周波数の低い成分である電圧変動を流すには定義式より大きな容量のコンデンサを入れればよいです。つまり、容量の大きなコンデンサを電源線とGNDの間に入れれば電圧変動をGNDに流され電圧は安定するということです。

 

ハイパスフィルターやローパスフィルターも同様の数式で計算します高周波成分のみを通過させて出力先に流すのがローパスフィルター、高周波成分のみをGNDに流して出力先には低周波成分のみを流すのがローパスフィルターということです。