今までは電子部品のお話ばっかりでしたが、今回からは回路的なお話をしたいと思います。今回は1つの半導体スイッチでだけで作れる回路は限られるので、半導体スイッチを複数組み合わせて回路を作るというお話です。
今回の回路図では素子をすべてMOSFET(以後FET)の図記号で記載します。また、次回の半導体スイッチの駆動回路のお話のときの都合上、低圧のラジコンのモータドライバを例に紹介を行っていきます。
まずは、単純に半導体スイッチを使ってラジコンのモータを回す回路です。
この回路は、FETをONにするとモータが回って、OFFにするとモータが止まる、FETを使ったON/OFF回路です。ですが、ラジコンのモータドライバとして使うには、問題があります。それは、モータを逆向きに回せないということです。この問題を解決するために、電源とFETを1つづつ増やした回路を考えてみます。
このようにすることで、上のFETをONにする場合と、下のFETをONにした場合で電池の向きが逆になるのでモータの回転方法が逆になります。これにより、目的が達成できたように思えますが、実はこれも完成形ではありません。この回路だと電池が2つ必要とるためコストや重量が大きくなってしまいます。
そこで1つの電源で+も-も両方出せる、つまり電源1つでモータの正転も逆転もできる回路があればベストといえます。ここで、FETを4つ使いの以下のような回路にすることで、これが実現可能になります。
この回路は一般的にHブリッジと言われる回路です。簡単な回路ですが、一応説明をしておきます。まずはモータを正の方向に回したい時は2と3のFETをONにします。
すると緑の線を引いたところに電流が流れますね。電流の向きは矢印を書いた向きなのでモータの左から右です。 次に逆向きに回したい時は1と4のFETをONにします。
今度も緑の線を引いた通りに電流が流れるので、今回はモータの右から左に電流が流れますね。このようにすることで1つの電源からモータを正回転と逆回転をさせることができます。
単相のVVVFの場合も同じ原理で+向きと-向きの電圧・電流を作り出します。また、3と4のFETをONにすることでモータにブレーキをかけることもできます。
ブレーキモードでは緑の線のような回路が構成されるのでモータがショートした状態となってブレーキがかかります。しかし、これをするためには、半導体スイッチ保護用のダイオードが必須です。その理由は半導体スイッチに逆向きに電圧をかけると破損するからです。(ONにしてる時はじつは逆向きに電流流しても大丈夫って話も聞くけどやったことないのでわからないです…)
Hブリッジの回路ではブレーキ時はもちろん、開放状態にしたときにもモータから逆起電流が発生するので、FETに逆向きの電圧がかかってしまいます。すると、何も保護していないFET(FETの場合寄生ダイオードがあるので厳密には保護されている)は故障してしまいます。そこで、FETと逆方向にダイオードを追加することで、逆向きの電圧・電流をダイオードに流し、FETを保護します。
先ほどのHブリッジにダイオードを追加するとこのようになります。このようにすると、モータのブレーキをしたときなどにFETに逆向きの電圧がかかることはなくなります。
最後に3相のVVVFの回路図を示します。
この回路は、Hブリッジにアーム(上下のFETの組)を1つ追加したものとなっています。そのほかは特にHブリッジと差はないと言えます。