今まではVVVFの要の部分である半導体スイッチの関連のお話をしてきましたが、今回は自作VVVFの電源となる整流回路のお話をしたいと思います。

 

整流回路交流を直流に変換するための回路です。搭載する部品は基本的にはダイオードとコンデンサとなるので、回路としてはシンプルです。ダイオードの代わりに半導体スイッチを使い、入力の波形に応じてON/OFF制御することも可能ですが、主にVVVFを逆動作させる場合や、大電力の場合で使われ、電子回路レベルでは基本的に使わないので省略します。今回は基本的な整流回路の種類について紹介して、それに取り付けるコンデンサの容量についても紹介します。

 

半波整流回路

整流回路の中で最も簡単な回路です。初めに、コンデンサをつけていない場合の回路図と出力の波形を見てみましょう。

半波整流回路図

右の+-が中に入った〇が交流電源を表しています。(本来の記号は〇の中に~ですがご了承ください)そして抵抗器が負荷を示しています。すなわち、抵抗器の両端が出力電圧というわけです。

入力波形と出力波形を見ます。

半波整流

黒線が入力の正弦波の電圧波形、青線が出力の電圧が波形です。完全な理論値での波形の場合出力波形で電圧出力時は入力波形の0Vより上の部分と全く同じになりますが、今回はシミュレータにかけたため少しなまった波形になっています。

この回路では入力の電源の半分しか出力されていないため、無駄が多いうえに、出力が0Vの間が長く続くため、一定の電圧出力にするためには大型のコンデンサが必要となります。そのため、この回路は小型省電力の場合に使われます。

一般的に整流回路としてよく使われるのが次に紹介するダイオードブリッジを使った方法です。

 

全波整流

 全波整流はダイオードブリッジを使うことにより交流の波形すべてを出力可能にしたものです。回路図は以下のようになります

全波整流回路

回路図のようにダイオードブリッジの中間点から交流を入力すれば、ダイオードのカソードから+ アノードから-の直流が出てきます。

 全波整流

入出力の波形はこのような感じになります。短波整流では交流波形の正の部分しか出力されなかったのに対して全波整流では負の部分も正の向きに変換されて出力されます。このため電力を効率よく使用できます。また、電圧が出力されない期間がほとんどないのでコンデンサの容量を減らすこともできます

 

整流回路のコンデンサ

次に半波整流と全波整流でコンデンサを搭載した場合の波形を見てみます。

今回は半波整流・全波整流ともに470uFのコンデンサを取り付けた場合を仮定して波形を出しました。なお、負荷抵抗は100Ω、入力電圧の実効値は100Vとします。

半波回路C
全波C回路

コンデンサは図のように負荷に並列に接続しています。

この回路の出力波形は以下のようになります。


半波C
全波C

この波形からも同じ容量のコンデンサを接続した場合でも全波整流の方が、明らかに電圧変動が少ないことがわかります。

 

コンデンサの容量計算

次にコンデンサの容量の目安の計算を紹介します。

コンデンサの電圧と電流の関係は以下の式で表すことができます。
式1

の式を変形してコンデンサ容量の式にします。

式2

ここで電圧変動「dV」をリップル、つまり出力波形の許容電圧変動とします。また、電圧変動の時間「dt」を先ほどの整流波形の最大値の間隔、つまり60Hzの交流の場合半波整流で1/60[s] 全波整流で1/120[s]と考えます。これによって、コンデンサ容量の計算ができます。

 

倍電圧整流

VVVFを作る場合基本的にモータは3200Vのものが多いです。しかし、家庭用の電源は100Vであるため、電圧を上げる必要がります。トランスを使う方法もありますが、それを使わずに整流回路で電圧を倍できる倍電圧整流というものがあります。倍電圧整流の回路図は以下のようになっています。

倍電圧回路

この回路の考え方としては半波整流を2つ用意し、そのうち1つだけ向きを逆にして直列につないだ形といえるでしょう。その結果、正の向きの波で上側のコンデンサを充電し、負の向きの波で下側のコンデンサを充電されます。そしてこの2つのコンデンサが直列につながれているため倍の電圧が出力されます。次に出力波形を見ます。

倍電圧

初期の波形の形が少しややこしい波形となっていますが、0Vを基準にして入力電圧の倍程度の電圧が出力されていることがわかると思います。

全波整流や半波整流では出力電圧が約140Vでしたが倍電圧整流ではその倍の280Vが出力されていないことが波形からわかります。この理由は、倍電圧整流の2つのコンデンサが充電されるタイミングが半波分ずれるためです。そのため、充電された側のコンデンサがある程度放電されたときに、もう片方のコンデンサが充電されます。結果として最大電圧が280Vとなりません。なお、コンデンサの容量を大きくすることで改善が可能です。

ここで先ほどの倍電圧整流のコンデンサ容量を4倍にした波形を見てみます。
倍電圧改善

これによって出力の最低電圧が全波整流の倍の電圧となり最大電圧もほぼ280Vとなりました。

PS.起動時に入力電圧程度の出力が出ているのは、初回は上の回路図の下側のコンデンサが充電されていないためです。

 

倍電圧整流のコンデンサの容量計算

コンデンサの容量の計算式は全波半波整流と同じ数式を使います。なお、コンデンサが直列に接続されているので実際に使うコンデンサは計算結果の倍の容量のものを使わなければなりません。これらを考慮して計算すると、全波整流と電圧変動を同じに抑えると、電圧変動の時間が2倍・直列による容量半減により、全波整流の4倍の容量のコンデンサが必要といえます。

 

コンデンサの容量計算の例

60Hzの交流を入力し、1Aの電流を流し、電圧変動を10Vに抑えるとします。すると以下の式で計算できます。

全波整流
式3
倍電圧整流

式4